3人が本棚に入れています
本棚に追加
二章 元勇者という名目
アーディは考える。
地下深く続く道なき道を潜り、着いた先は地下とは思えないほどの大きな空間に出た。
緑に囲まれた湖。
その湖を超えて小島の台座に刺さっていた剣を引き抜き、アーディは悩んでいた。
手にした剣は噂によると聖剣ということらしいけど、実際この場所は聖剣があっても不思議じゃない感じがする。しかし――。
『我こそは――――』
引き抜いた瞬間からずっとこんな調子でこの剣は話続けている。言葉を発している。普通ではありえないことだけど、まぁそこは噂で聞いていたから驚きはしなかった。
パーティ全体に語り掛けているようで、皆も顔を顰めている。
「――で、お前がこの湖の聖剣でいいのか?」
うんざりしながら、その剣に聞くと今度はアーディの言葉が気に食わないと噛みついてきた。
「あぁ、もうわかったから『カブル』。ちょっと静かにしてくれ」
何を言っても話をやめない。長ったらしい名前をいきなり覚えろっていうほうが、無理難題なんだよと思うだけにしておく。
長いため息を吐きだして、とんがった長い耳のエルフに目線で助けを求めた。
金髪を奇麗に結い前髪をかき上げ彼女は苦笑する。
最初のコメントを投稿しよう!