二章 元勇者という名目

1/5
前へ
/11ページ
次へ

二章 元勇者という名目

 アーディは考える。  地下深く続く道なき道を潜り、着いた先は地下とは思えないほどの大きな空間に出た。  緑に囲まれた湖。  その湖を超えて小島の台座に刺さっていた剣を引き抜き、アーディは悩んでいた。  手にした剣は噂によると聖剣ということらしいけど、実際この場所は聖剣があっても不思議じゃない感じがする。しかし――。 『我こそは――――』  引き抜いた瞬間からずっとこんな調子でこの剣は話続けている。言葉を発している。普通ではありえないことだけど、まぁそこは噂で聞いていたから驚きはしなかった。  パーティ全体に語り掛けているようで、皆も顔を顰めている。 「――で、お前がこの湖の聖剣でいいのか?」  うんざりしながら、その剣に聞くと今度はアーディの言葉が気に食わないと噛みついてきた。 「あぁ、もうわかったから『カブル』。ちょっと静かにしてくれ」  何を言っても話をやめない。長ったらしい名前をいきなり覚えろっていうほうが、無理難題なんだよと思うだけにしておく。  長いため息を吐きだして、とんがった長い耳のエルフに目線で助けを求めた。  金髪を奇麗に結い前髪をかき上げ彼女は苦笑する。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加