二章 元勇者という名目

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「アーディ、これは呪いでもなんでもない。その剣の性質だ」 「そうか。このうるさいお喋りもそういうことか?」 「あぁ、そういうことだ。諦めろ」  美しい彼女は目に合わず男っぽい話し方をする。 「それが呪いの類のものならば、喜んで私がもらうが――しかし、それはうるさくて嫌だ」  呪い関係を専門にする彼女がそう言うのなら、このお喋りは剣の性質なのだろう。 「確か湖の周りに精霊たちがいたな。なあキアラ、精霊たちにちょっと真意を確かめてくれないか?」  キアラと呼ばれたエルフは嫌そうに眉を潜める。 「もの凄く嫌だ」 「……さっき落ちていた指輪に纏わりつかれているんだけど、それやるからどうだ?」 「んん?」  アーディの足元にくっついていたシルバーの指輪を摘み、キアラの目の前にそれをちらつかせた。  キアラの目付きが瞬時に変わる。 「わかった精霊に話を聞いてくる。その前にそれをくれ」  呪い関係の専門家。本当は呪われた物の収集家。それが原因で普通の人はキアラを奇異な目で見る。  嬉々として精霊のほうへ走っていく彼女を見送った。 ***     
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