二章 元勇者という名目

3/5
前へ
/11ページ
次へ
『我が名は、カリブルヌス・イサーラ・フィロ・ファーブラーリス。我を手に取った聖なる血族の者よ、戦いその手を血に染める覚悟は出来ているか? カリブルヌス・イサーラ・フィロ・ファーブラーリスはこの名において必ず栄光と幸運、力を授けよう。魔なるものはカリブルヌス・イサーラ・フィロ・ファーブラーリスの気配だけで蹴散らしてくれよう。お前は選ばれし勇者だ。この私、カリブルヌス・イサーラ・フィロ・ファーブラーリスがそれを証明し高らかに公言しよう。我は聖剣なり。聖剣カリブルヌス・イサーラ・フィロ・ファーブラーリス。さあ――』  アーディが台座から剣を抜くとともに、封印が解け剣が話し出した。  けれども驚きの前に、最初の長い名前のところで皆は思考を止めてしまった。  その後も剣が話をやめることなく、今までの歴史や己の功績、争いから避けるためにこうして自らここへ封印されることを望んだ……らしい。 (正直、どうでもいい……。というか、本当は元の持ち手が騙すような形で、ここに封印したような気がする)  だとしたら、せっかく封印したものをアーディが覚醒させてしまったということだ。  噂を丸呑みして探索をしてきたわけじゃないけれど、さすがにこれはないと思う。  さて問題はこれをどうしたら、お金になるか……アーディは悩む。  背後で背の低いフィリアが笑っている。一応は我慢をしてくれているようだけど、抑えきれないらしい。二百歳も生きているハーフリングでも、なかなかないこの事態は楽しくて仕方ないらしい。 「フィリア笑うな。俺だって好きでこれを台座から引き抜いたわけじゃない。誰も抜けなかったんだから……仕方ないだろう?」 「いや、悪い。ほんと悪い。でもさアーディが『選ばれし勇者』とはね。本当は『元勇者』で現在『失業中』なのにな」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加