二章 元勇者という名目

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「フィリア、その辺でやめてくれ。今月は就活四回も失敗したんだ……」  その一言で、フィリアはやっと黙ってくれた。 「いや、悪かった。早く仕事に就けるといいな」  しんみりとしたこの時も、剣は黙ることなく話を続けていた。 ***  アーディは台座をちらりと見て考える。 「なぁ、この剣をまた台座に突き立てて封印するか?」  剣を軽く振り回して、少女姿のミュラに提案する。  ミュラは頷かない。 「アーディ、それは駄目よ。ここまでの食料や薬、そのほかの消耗品だけでお金がかかっているのよ。かなり不本意だけど、持ち帰り換金しなきゃ生活できないわ」 「わかっている。しかしこれは売れるかなぁ? 念のため帰りながら鉱物や薬草を採取していこう」 「そうね」  ミュラは同意して、封印のされていた台座を後にする。  結局持ち帰り、武器屋や換金出来そうなところを当たってみたけれど、だれもこの剣をお金に換えてくれなかった。 「店に置いていても営業妨害にしかならないもんな」  そう呟き肩を落とす。薬草や鉱物はキアラとフィリアに換金しに行ってもらってよかったと思う。  キアラは丈夫そうに見えても、エルフ。寿命は長くても生命力は弱い。 「私もお腹が空いたわ」     
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