第58話 船上パーティー 後編

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第58話 船上パーティー 後編

六車(むぐるま)は、福富を黙らせて話を続けた。 ニューデリーにある、ヤムナー川の近くの地下にあった人間の記憶や感情をデータにできる装置。 その装置を開発した人間は、元々はクローン人間を作ろうとしていたようだと。 「だが、うまくいかなかったらしい」 そう言ってまた席に戻る六車。 「どうしてかな? よくSFでありそうなのは、培養カプセルから出てしまうと、人の形を維持できないみたいなのを聞くけど」 八尋は質問しながら、着ていた白のロングフードパーカーを脱ぎ、綺麗に畳んで、空いているイスの上に置く。 「日記によれば、人間の姿をしたものはできたのだが、足りなかったんだ」 「そうか。魂がなかったんだね」 六車は、八尋の言葉に頷く。 「その人物は何故クローンなんて作ろうとしたのだろう?」 六車は、はっきりとわからないが、愛する人間を蘇らせたかったのではないかと返した。 「そうなんだ……。悲しいな。姿形だけが同じでも記憶がなければ、それはもう別物だ。それでその人は記憶や感情をデータ化して肉人形に入れようとしていたのかな?」 「おそらくな。結果はどうなったかわからないが、死んだ人間の心は手に入る事はないだろう」     
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