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俺はこの世界の主人公である
《プロローグ》
周りを見渡す限り、自国のために血を流しながら戦っている兵士や息を絶って横たわっている兵士達がそこにはいた。
ーー怖い。
走った。恐怖という感情に飲み込まれそうになりながらも助けを求め無我夢中に走った。
すると、走った先に方膝をついて息を切らしている赤いハチマキを巻いた男がいる。
そのときの俺には敵なのか味方なのか関係なかった。助けを求めるべくその男に一直線に走った。
――希望が目の前にある!
が、そんな思いも束の間だった。その赤いハチマキを巻いた男の目の前に歩み寄り、足を止めた大鎌を持つ獣人が男の首をその大鎌で落としたのだ。
――希望から一転して絶望に変わった。
足から崩れ落ちた。そして俺はこの戦場で死を察した。
獣人は大鎌を担ぎこちらに向かって歩いてくるが、俺は腰も抜けており逃げることさえ出来なかった。だが、獣人は俺に気付かなかったのか興味がなかったのかわからないが、俺の横を通りすぎていった。
先ほど首を落とされた男の方に目を向けると、その男に駆け寄る男女が――。その男女は、死んだはずの俺の親父と母親だった。
俺ははっきりと聞いた。その男に向かって涙を流しながら母親が放った言葉を。
「和司ーーーー!!」
それは俺、黒谷和志の名前だった。
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