愛は叫ばなければ伝わらない * side Rina Sasaki.

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*** 「んじゃー、次は移動なー。チャイムが鳴るまでに移動完了するように。チンタラするなよー」  化学教師の雑な口調で始まる指示を皮切りに、教室中の緊張が一気に解けていく。元々、規則そのものは厳しくない学校で、唯一厳しいのは勉強の進度と揶揄されるほどのハイレベルな進学校で、授業に区切りが付いた途端に張り詰めていた糸が緩むのはいつものこと。入学当初は、そのオンオフの殺伐とした空気の切り替わりの激しさに付いていけなかった。……が、それももう昔の話。  緊張が緩和した状況を目ざとく見つけ、いかに楽しむことが出来るか。それこそ、学校生活を逞しく生き残るために必要なことだと気付いたからに他ならないと言えるだろう。 「リナ、行くよー!」 「わわわ、りっちゃん。待って、待ってー!」  2コマ続きの化学の授業の後半が、実験になることはよくあることだ。若干、授業を前倒しで終了し、他のクラスが授業中の中を移動する優越感は、やはり何度経験しても気持ちいいものがある。
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