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私語厳禁! 目的地まで足早に!! と、常日頃口酸っぱく指導されているものの、やはり叱られない絶妙な加減で話もしたくなるのは人の性というものではないだろうか。
「おっ、佐々木。今日の髪型、なんか引っ張りやすそうだな」
「いや、鈴木くん。これ、引っ張るためにあるんじゃないし!」
「そうよ、鈴木。私の芸術作品に手を出したら容赦しないわよ」
「……ん? どういう意味だ? 篠原姉(あね)?」
鈴木くんは、りっちゃんのことを篠原姉と言っている。それは、篠原弟が同級生にいることに他ならない愛称であり、また鈴木くん以外にも多くの男子がりっちゃんのことを篠原姉と言っている。呼び名にそのまま『姉』というフレーズを使いたくなる気持ちは解らなくもない。それほど、りっちゃんはしっかり者で面倒見の良いキャラクターで通っているのだから。
「あぁ、これね。りっちゃんがやってくれたの」
そう言って、ポニーテールの結び目を片手でチョンチョンと指差して、説明をする。
「あぁ、なるほど。さすが、姉さん。俺はてっきり」
「てっきり?」
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