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「あ……。いや、その」
「何か、考えてたんでしょ?」
みんなの会話に加わらず、隅っこで微笑んでいた私を捕まえ、りっちゃんがこそっと耳打ちをする。こういう時のりっちゃんの観察眼は目聡すぎる。だからこそ、こういう時にはごまかそうとは思えない。だって、そもそもごまかせるとも思えないのだから……。
「いや……。鈴木くんに言われて、改めて思ったんだ。私、りっちゃんがいるからこそ、何とかなってるんだなと」
「…………」
私の返事が、りっちゃん的に予想外の物だったのだろう。一瞬、大きく丸く見開いた瞳の色は、かなり複雑な光を帯びていた。
「何、言ってるの。リナががんばってるからこそでしょ!」
「りっちゃん?」
「あー、もう。鈴木は何も解っていないんだから、気にするほどの価値にあらず! オッケー、リナ?」
気にするほどの価値にあらずというかなりぞんざいな扱いを受けている鈴木くんに対して、気遣う余力なんて一切なかった。ただただ、その時はりっちゃんの私への気遣いに対する感謝でいっぱいいっぱいになっていた。
「おーい! 実験始めるぞー! みんな、席に着けー!」
先生の呼び声を聞いて、慌てて実験室に滑り込もうとしている私に、りっちゃんはこそっと耳打ちする。
「とにかく、リナは気にしなくていいからね!」
そう言って、背中を軽くポンっと押してくれるりっちゃんに感謝をしつつ、にこりと笑みを浮かべるだけで精一杯だ。でも、りっちゃんはそれさえもきちんと汲み取ってくれる。その優しさに、心の底から感謝していた。
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