愛を叫ぶことに際限は存在しないらしい * side Haruhiko Sakai.

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「まさか、カオルが入れ込むほどに真実が見えにくくなるタイプとはね」 「……っ!!」  俺の発言を聞いたカオルは、思わずバッとリナの方を振り向いている。恐らく、リナに俺の発言が聞こえたか心配したのだろう。さすがの俺も、そこまで酷いヘマはしやしない。  俺の発言がリナに聞こえていないことを確認し、カオルは俺にだけ聞こえる声で聞いてくる。 「ハル的に、落とし所はどう考えてるつもりなんだ?」 「…………」  落とし所を考えてなかったといえば、嘘になる。一応、俺の中で納得の出来る着地点がないこともない。  だが、これらは全て相手がいることであり、俺の希望だけを押し付けて解決出来る問題でもないことを知っているからこそ、押し通すことはしたくないと思っていた。 「まぁ、妥協点がないことこそが妥協点だと思ってる」 「は?」  俺の答えに、素っ頓狂な声を上げるカオルに向けてにこりと微笑む。 「姫君たちは現状維持を望まれてる。姫君『たち』が、だよ? カオルなら、これだけで十分に意味は分かるよね?」 「ん……。あ、ああ……」  半ば無理やり頷かせて、俺は自分の役目を終了することにする。  無理やり、こじ開けて関係を築いたところで良いものが出来るはずなんてない。だからこそ、俺も現状維持には賛成だ。むしろ、現状維持で得られる環境も、そこまで悲観的ではない現状で、反対してまで革命することこそリスクが大きすぎると言えるだろう。
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