愛を叫ぶことに際限は存在しないらしい * side Haruhiko Sakai.

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 姫君が望んでいるのは、現状維持。  現状維持とは、四人の関係がこのまま切れることなく続くことを指している。  それにしても、俺がカオリを好いていて、カオルがリナを好いてる現状に、それぞれそのまま振り向いたなら、全て丸く収まる可能性に、誰も思い至ることはないのだろうか。  そんなことを思いつつ、ブツブツと文句を言い続けているカオル放置し、俺のお気に入りの姫君の様子をそっと窺って見る。 「……さすが、カオリだな」  茫然自失のリナに寄り添っているカオリを目にしたからこそ、感じる思いもある。四人で助け合う関係があるからこそ、良好な環境を保てている。四人が傍にいる環境だからこそ、支え合えることがある。  そのことを知っているからこそ、姫君たちが望みを否定してまで、自分の希望を押し通したいとは思えなかった。それどころか、姫君たちが要望する現状維持の提案は、今の俺たちが生活する上で必要な環境すべてを手に入れる良案にさえ思えたのだ。  俺だけが一人で支えるには、まだまだ力不足だと認識している。だからこそ、大好きな君が頼れる環境を俺の手でぶち壊すことだけはしたくなかった。  そんな俺の原点を思い起こした騒動を経て、ようやく俺たちの山場も終結することとなった。
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