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 平成二十九年、三月二十七日。 温かな日差しが差し始めたこの頃。 突如として、時が止まった。 時間は、午前五時四分。 日の出が出始めた、ほの明るいこのタイミングで、時計の秒針は止まり、動画の音楽は、走り始めた車のエンジン音と共に消え失せた。 ほとんどの人が寝ている時間。静かで、もしかすると自分自身の耳が聞こえなくなってしまったのだと、勘違いをしてしまいそうだ。 大きめの白いパーカーに黒のスキニーに着替えて、お気に入りのハイカットのスニーカーを履いて外へ出る。  すると、明け方の肌寒い風が私のほほを撫でた。 なぜ、時が止まっているのにも関わらず、風は吹くのか。 全く動かない雲を少しの間見上げて、家に戻る。 キッチンには、朝ご飯を笑顔で作るお母さんが、包丁を握りながら止まっている。  おそらく、お父さんは布団で寝ているだろう。 ……どうして、私は動けるんだろう。 そんな疑問が頭を埋める。 思いついた答えは、これは夢だということ。 私は、変な確信を持ちながらお母さんの持っている包丁の刃に手を伸ばし、少しだけ切ってみる。 「っ……」 痛かった。 指からは血が滴り始め、思ったより深く切ってしまったことを教えてくれる。
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