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普段は、何気ない音だけど、この静かな世界で、私以外の音は初めてで少し驚いた。  チリン……チリン…… 音のほうへ歩みを進めていると、住宅街の塀の上に、しっぽを揺らしている黒猫が一匹いた。 首には赤い首輪が付けられており、鈴もついている。 「ネコだ」 つぶやく。 はたから見られているとしたら、「そりゃあネコだろうね」と言われそうなこの状況。 いわれもない気恥ずかしさが押し寄せてくる中、ネコは私の足元に降りてきた。 「ん~? どした? おなか空いた?」 私が問いかけても、ネコは「にゃー」となくだけで、私の言葉が通じるわけではない。 私は、かがんで手を伸ばす。 すると、私の指をぺろぺろと舐める。 少しくすぐったさを感じながら、もう片方の手で頭をなでる。
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