2人が本棚に入れています
本棚に追加
普段は、何気ない音だけど、この静かな世界で、私以外の音は初めてで少し驚いた。
チリン……チリン……
音のほうへ歩みを進めていると、住宅街の塀の上に、しっぽを揺らしている黒猫が一匹いた。
首には赤い首輪が付けられており、鈴もついている。
「ネコだ」
つぶやく。
はたから見られているとしたら、「そりゃあネコだろうね」と言われそうなこの状況。
いわれもない気恥ずかしさが押し寄せてくる中、ネコは私の足元に降りてきた。
「ん~? どした? おなか空いた?」
私が問いかけても、ネコは「にゃー」となくだけで、私の言葉が通じるわけではない。
私は、かがんで手を伸ばす。
すると、私の指をぺろぺろと舐める。
少しくすぐったさを感じながら、もう片方の手で頭をなでる。
最初のコメントを投稿しよう!