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「眩しい・・・」
目を開ける。
小窓から差し込む光がちょうど顔に直撃していた。
ゆっくりと体を起こし、辺りを見渡しようやく理解が追いつく。
「夢か・・・」
毎日ってわけじゃないがここ最近同じ夢を見ることが多い。
生まれた時の記憶のような夢だが、もちろんそのような記憶があるわけではない。
記憶はないのに自分の記憶のような夢を見る。
「・・・なんかの病気かな」
そんな冗談を言いながらあくびをして立ち上がる。
今日もやることはいっぱいある。
新聞配達やらヴェルター博士のお手伝いやら食材の買出しやら・・・
いや、買出しは明日にしよう。
隣の部屋ではいつものように料理をしている妹のアイリスがいる。
魚を焼く音であまり聞こえないが鼻歌を歌っているようだ。
ぼーっと見つめていた俺に気づいたのか、こっちに目をやりにっこりと笑顔になる。
「ルト、おはよう」
うん、可愛い。
世の兄は妹に冷たくされるあまりに妹を毛嫌いしているようだが俺はそんなことありえない。
と、思うのも実の妹ではないからなのだが・・・
「おはようって返してよ?」
「あ、おはよう」
「今まで目開けながら寝てたの?」
意地悪な微笑みを見せる妹もどき。
実の妹ではないというのは、俺が4才くらいの頃に母が他界していて父親一人じゃ育てられないという事で孤児院に預けられたことがまずきっかけである。
その孤児院には1才のアイリスが院長に抱きかかえられていた。
孤児院に入ってから2年、俺とアイリスを引き取ってくれるという老夫婦が現れ、形上で俺とアイリスは兄妹になったというわけだ。
2年前に老夫婦は亡くなり17歳の俺は生活のために毎日働き、お金を稼いでいる。
アイリスには家事全般をやってもらっている。
「はい、ご飯できたよ」
と、いつもの笑顔で食卓にご飯を並べる。
うん、可愛い。
いつかきっと良いお嫁さんになることは間違いないだろう。
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