第2章

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動き出す人形・・・にわかには信じ難い話なのだが、この不気味な雰囲気を目前にすると本当に動き出すのではないかと思ってしまう。 「進みましょう・・・」 街中は静か。 近づいてみても、笑顔の人形達はピクリとも動く気配を見せない。 そういえばここにはピエロの幽霊がいると言う噂があるが、今のところそれらしいものは見当たらない。 「おい、あれ・・・」 イゾラが狭い道を指差す。 そこにはボールが転がっている。 一人でにこちらに向かってくるボールはやがて俺の足に衝突し、その動きを止める。 「なんか書いてある・・・」 ボールを手に取りその字を見てみるとそこには「ようこそ、君達を歓迎するよ」と書かれていた。 「誰かに見られてるのか・・・?」 辺りを見回すが誰もいない。 まさかそのピエロとやらがこのボールを転がしたのだろうか。 ボールを投げ捨て、気を取り直して道を進む。 相変わらず人形が多い。 いろんな形をしているが顔だけは全て同じ、不気味な笑顔をしている。 みんなそれぞれの方向を見ているが、こちらを見る人形は誰もいない。 そんな事を思った矢先、人形と一瞬目が合ったような気がした。 「っ・・!」 体をびくつかせ、その人形を見る。 「どうした?」 「いや、あの人形・・・一瞬こっち向いたような・・・」 やはり気のせいなのか、その人形はピクリとも動かない。 しかしなぜか気になってしまい、ゆっくりと近づく。 すると人形の口がカクカクと動き始め、音声が流れる。 「ひっ・・!」 「ディレット・・ノ・・タノシイ・・タノシイ・・サーカス・・ヘ・・・ヨウコソ」 情けない声を上げてしまった。 しかしディレットとは一体誰だろう・・・ ピエロの名前だろうか。 「そ、そんな人形に構うことはない・・・とにかく急ごう」 「それも・・・そうですね」 ターリスは俺の情けない声を聞いて笑いをこらえている。 こいつめ。
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