第2章

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そして暫く歩く事10分、目の前に大きなサーカスの舞台が見え始める。 大きな扉がまるで俺たちを招くかのように口を開けていた。 「もしかしたらあの中にラフィカがいるかもしれない」 イゾラはそう言うと、急に走り出して行ってしまった。 「あ、一人だと危ないですよ!」 俺も後を追いかけて、扉をくぐり抜ける。 サーカスの舞台の中は何もない真っ平らなステージ。 観客席には無数の人形が笑顔で座っている。 そしてそこには誰もいなかった。 「・・・ラフィカはいないか、戻ろう」 「そうですね・・・」 そして戻ろうと踵を返した瞬間、今まで開いていたはずの扉が閉まっている事に気がついた。 「と、扉が閉まってる!」 急いで扉に向かい押したり引いたりして見たがピクリとも動かない。 「くっ・・・ダメだ」 「だれもここにはいないはずなのに・・・」 ターリスが辺りを見回しながらそう言ったその瞬間、頭上がライトアップされ、謎の声が響きわたる。 「え、ピエロは喋っちゃいけない? そんなの誰が決めたんだい? 僕ちんはいっぱい話すよ。だってここにいるって存在を確かめたいからね!」 空中ブランコに乗ってやってきたそいつはピエロの格好をして陽気な声でそう喋る。 「誰だ!」 「僕ちんはディレットって言うんだ。だって僕ちんはディレットって言うからね!」 だんだんと下がってくる空中ブランコ。 ディレットと名乗る男はピョンピョンと跳ねながら楽しげに話す。 「君達は僕ちんを楽しませてくれるお客さんだよね。あれ、僕ちんピエロだからお客さんを楽しませなきゃいけないのかな? どっちでもいいよね。だって僕ちんはピエロだからね!」
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