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「僕ちんを殺すの?」
「・・・」
気づいた。
俺はこいつを・・・殺してしまうのか?
こいつを病院まで連れて行こうかと一瞬考えたが、この血の量ではもう手遅れだろう。
ここで手を下さずとも放っておけばいずれ消える命。
だがどちらにしても俺が殺してしまった事に変わりはない。
俺はあと数分で人殺しになってしまうのだ。
それが凄く怖い。
今まで怒りで埋め尽くされていたが、冷静になってこの状況を見てしまうと俺が人間でない事をしてしまっているのだ。
「俺は・・・」
「どうしたの? 僕ちんを殺すんでしょ?」
「違う・・・俺は・・・人殺しなんか」
やめろ。
やめてくれ。
俺は妹を助ける為に人を殺して、妹は俺をどう思う?
『お前さんが最大の光と成れ』
光?
俺が?
人殺しの・・・俺が?
「やめろ・・・」
「もしかして人を殺すのが怖いの?」
「やめろぉぉぉぉ!」
銃声がなる。
不気味に嗤うピエロの頭がブレ、そのまま床に倒れこむ。
「・・・」
最後の一発を放ったターリスはただ無言でその光景を見つめていた。
「タ、ターリス・・・お前」
「ルトは人殺しなんかじゃないよ」
珍しくターリスは真面目な顔つきで真面目に話す。
いや、こんな真面目な顔は初めて見た。
その真剣な眼差しは何度も聞かされた「機械」という言葉を忘れさせてしまうほどのものであった。
「この先、色んな敵と戦う事になると思う。ルトはそれでもみんなの為に戦って勝って・・・時には殺さなきゃいけない時だって来る」
「・・・」
「でも安心して。それは人を殺すんじゃなくて・・・人々を救う事になるんだよ」
胸の奥が掴まれるような感覚。
自然と涙が溜まり、堪えられず流してしまう。
「俺は・・・」
「深く考えなくていいの。それに・・・」
ターリスがディレットに目をやる。
ディレットは黒い靄を出しながらだんだんと消えていく。
「そもそも人間じゃないみたいだよ、これ」
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