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もういいかい――――――まあだだよ。
残暑の頃の夕暮れに、名もない跡地に集まった子供。どの顔もいきいきと映え、懸命に身を隠す。小さな心臓が壊れそうなほど鼓動を打つ。その独特の興奮が時間を埋めた。
最後まで隠れた。
最後まで隠れたのに。
みんなはもう帰ってしまう。まだ日が沈んでいないのに。
夏は終わっていた。みんな、オトナになっていた。
*****
後がない。
ハナとの距離は徐々に縮まってゆく。
取り残されてしまったのだ。喜び、希望に満ちていた彼女の時代に。ずっと一人で、まだあの夏を追いかけている。
友達は既に消えた。理由は様々に、虚しさだけが残っただろう。その虚しさに押し潰されないよう、ハナはこの世界で生きている。
強くランタンを握る。汗ばんだ手のひらは異常に冷たい。
私はまだ見つけていないのだ。ここでずっと、ハナと遊んでいることはできない。だからお別れだった。
「……ごめんね」
彼女は嬉々として腕を振る。喜びはもはや言葉にもならず半ば奇声となった。
走ってくる。走ってくる。走って。
「ァアアアァアァアアア――――」
黒になった。
それは待っていたように思えた。
静かに、音もなく。
『――――――――――』
瞼をそっと開いて驚く。
闇から現れたのは、あの社で出会った影だった。
寸前、影は眩さに染まる。
夕闇を弾いて真っ白に輝く光。
希望と絶望の縁、そのほんの狭間の"時"にすら飲み込まれない。何らかの強い意思を持って、光を放つもの。
あの子ははもういなかった。悲しそうに、顔を歪ませて消えていった。あの子に"もう一度"はないだろう。ようやくこの世界の先へ行くことができたのならば。
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