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 それはもしかしたら、自分も然り。どちらの方向かは分からないが、"もう一度"は無い。  再び訪れる夕暮れの静寂に、佇む自分と影。  助けてくれたのだ。  しかしその生き物は人ではない。従ってそれは黒でもあり、白でもある。この世界に棲む容貌をしながら、光を放つ存在。  影は薄く、また夕闇に溶けてゆく。消えゆく姿を、私は最後まで見届けた。    気がついたときにはランタンが灯っていた。揺れる焔、依然と蝋燭は溶けないが。  背中からフェンスを離し、ゆっくりと歩く。再びあの十字路やに戻ってみると、時計は止まっていた。秒針ももう動いていない。  私は再び歩き出した。行く先は、たぶん商店街のその先――――町の中のどこか。光の無い場所。  続く夜の町で、何を見つけるのだろう。
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