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全身が冷ややかに硬直して。再び目を開けた。
座っていたのはコンクリート。横に転がったランタン。焔は消えている。
弱々しくも朱に染まる町並み――――夜の割合は大きい。
揺らぎは去っていない。だが先程よりはしっかりとした意識だ。乾いた口を静かに閉じて、辺りを見回す。ここは、確かに商店街だ。
ふと、目に留まった。腕に赤黒い痣ができている。転んでいないし、打撲もしていない。いつの間にか現れていた。
ポケットに手をいれて、マッチ箱を取り出す。棒の先の白いマッチ。ランタンの灯りが蘇った。
その夏の記憶に間違いはない。全てが正しく、その全てはもう存在しないはずである。底の真っ黒なシグナルも正しく、彼女は自分自身に騙されていたのである。
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