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手長の目
今日の昼ごろでしたかねぇ。えらい綺麗な女のお客さんが寄ったんですよ。着ているのも中々質のいいもので、どうもこの街道には似つかわしくない。歳は……大体二十七、八くらいでしたかねぇ。
まぁ来たお客さんは快く持て成すのがあっしの信条ですから、いつも通り茶と特製の菓子を出して、ちょっとお喋りをしやした。
最初はちょっととっつきにくい印象を持ってやしたが、話してみると意外とそうでもない。物静かだけれども人懐こい感じの人で、話が弾んだんでさぁ。
しまいにゃ、
「どこかの銘菓みたい」
なんてあっしの出した饅頭を褒めるもんだから、すっかりこっちがもてなされてるみてぇで……。
そんな具合に色々と話を聞いたんですがね。このお客さん、昔はどこかの偉い家で給仕の仕事をしてたとか。
道理でって感じで合点がいきやしたよ。仕草とかに礼節がしっかりしてた。並みの家じゃああそこまでやらねえなって程度に。
あと、そういう仕事は二十歳までってなるところも多いって聞きやす。この人は給仕の仕事を引退して、その後色々あって、旅をしてるんだろうなってのも、何となくわかったんですよ。
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