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そんな感じで話してたんですが、ふと彼女の手に目がいったんですよ。別に深い意味はねぇんですけどねぇ。
すると、両の手に包帯を巻いてるのに気づいたんですよ。
「それ、怪我ですかい?」
ってあっしが聞くと、
「まあ……」
とかなんとか、微妙な返事が返ってきた。
なんか引っ掛かるなあと思ったんですがね、丁度その時新しいお客さんが来ちまったもんで、それ以上何もできなかったんですよ。
「ちょっといいかい?」
新しく来たお客さんは、あっしにそう声をかけたんです。振り向くまでもなく分かりやしたよ。
菓子売りをしている宍甘の旦那だったんです。
旦那は三十路を少し過ぎた、まぁあっしより十くらい年上の人なんですがね。あっしがもっと餓鬼の頃からの付き合いのある人なんでさぁ。
丁度いいってんで、女のお客さんにはちょっとの間一人でお茶してもらって、旦那から商品を買ったんですよ。
菓子じゃなく、材料のほう。あっしは店で出す菓子を全部手作りしてるんで、その材料を旦那から買い入れてるんでさぁ。
小豆やらモチ米やら、まあ一通り在庫が寂しくなっていたのを買い足して、勘定を済ませた。
んで、旦那が来たときゃ、いつも礼代わりに茶と菓子を出してるんですよ。だから今度もおんなじようにしようとしたら、
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