手長の目

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「おお、別嬪さんがいるじゃないの」  って、お客さんに話かけ始めてねぇ。  生来女好きな人だから、またか……って感じでさぁ。  お客さんも嫌な顔はしてなかったもんで、折角だからてんで、あっしも茶を入れて休憩することにしたんですよ。 「ったく、あん頃の小僧が、今じゃすっかり茶屋の主人が板についてるもんなあ」  妙に上機嫌で、旦那はあっしの昔話を語り始めた。  正直こっぱずかしいのはあるんですがね……。 「姉さん姉さん。こいつね、十五ン時から店を切り盛りしてんですよ。一人親に死なれてね? 俺ァこいつのおふくろが店をやってた時代から付き合いがあったんだけどよ、こいつが店を継ぐって決心したときゃほんとたまげたよ。最初は随分頼りなかったんだけどなあ……」  こんな風にペラペラと話しまくっちまうもんで、止めようかどうか迷ったほどでしたよ。  でも、何が興味を引くのかわかんないんですがね、お客さんのほうも妙に話に食いついてる。お陰でこっちは止められず、今までのこと洗いざらい全部話されちまった。  妙に上機嫌だったんで、ちょっと問い詰めたんですよ。したら、     
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