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次は朝日の見える日に
ピッピッピ
生体情報モニターの無機質な音が病室中に響いていた。
僕、多咲竜生はすごく気分が悪いのを耐えながら、窓の外にある数本の桜の木に目をやった。
桜の木には、無数の花が咲き誇っていて春の深みを称えているようだった。ひらりと花弁が一筋落ちると、どこからか幼児の笑い声が聞こえた気がした。
あぁなんて美しいのだろうか。僕もあそこへ行きたいな
そう思い手を伸ばして見るものの、当然のように空を切る。指の先が滲んでいるのを見て初めて僕が泣いている事に気付く。
僕は自分の意識と体が徐々に離れていくのを身をもって感じていた。綱のようにきつく結び付いていた僕の命は、いつの間にかたった1本の糸になっていた。
僕の意識が完全に体と離れようとしたときに、枕元に置いてあったスズランが視界に入る。
あぁやっと君に会えるのか
僕は遠い日の思い出を、走馬灯かのように思い出していた。
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空には無数の雲が浮かび、その隙間からは陽光が漏れだしている。
僕は木の柵に手をかけて、そんな風景を眺めていた。
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