極恐ヤンキーの純情事情と、わたしの事情

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 それにしても、これ……。  ごくごく一般的なA4サイズのスケッチブックを眺めながら、これが一番イメージ通りじゃない、とわたしは思う。表紙にも裏表紙にもところどころにカラフルに絵の具が付いているそれは、四隅の角の丸まり具合や紙のくたびれ具合から、それなりの時間、使い込まれた感じがあった。でも、とても丁寧な扱い方だ。例えば、この中に宝物でもあるみたいに。  ――まさかこのスケブ、本当にこの人のものだったり?  いや、でも。絵を描きそうな人には、まるで……。  でも、机に入っていたということは、ほぼほぼ確定的に持ち主が誰かを言っているようなものだと思う。机の持ち主の普段の様子を思い返してみても、わざわざこの机に近づいて何かしようとするチャレンジャーはそうそういないだろうし。  ていうか、何かしようと思う発想すらないと思う。  今のわたしみたいに偶発的に不運が重なり、スケッチブックを机に戻さなければならないという火急のミッションでも発生しない限り、誰も近づきたくはないだろう。  ――でも。 「ちょっとくらいなら、いい……よね」
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