誰のとなり、きみのとなり

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 そう言いながら、ここどうぞ、とパイプ椅子を引いてくれる彼女に軽く会釈を返すと、とりあえず先輩の隣の席に腰を落ち着けることにした。  部活も学年も違うけれど、美遥先輩とは、同じテニス部の亜瑚と写真部部長の瀬川(せがわ)悠二(ゆうじ)先輩経由で知り合い、一年生のときからとても仲良くさせてもらっている。  ちなみに部長は美遥先輩の彼氏だ。  美遥先輩をあえて〝部長の彼女〟と言わないのは、わたしがふたりの関係性から感じたことだったりする。良くも悪くも快活な美遥先輩にいつも振り回され気味の部長は、本人にはちょっと不名誉な言い方かもしれないけれど、〝美遥先輩の彼氏〟という表現がぴったり当てはまる。と、勝手にわたしは思っている。  そんな美遥先輩は、わたしのことを親しみを込めて〝モモちゃん〟と呼んでくれている。テニス部を引退したのはつい最近のことで。今はこの通り、まだ引退が先の悠二先輩と一緒に過ごすことに放課後の時間を使うおうと思っているらしい。  肩甲骨あたりまで伸ばしたツヤツヤの黒髪をポニーテールに結び、結び目に赤いバンダナを巻いてリボンにしている美遥先輩は、とにかく底抜けに明るく、そこにいるだけで太陽の光のように周りを明るく照らしてくれる人だ。
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