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底抜けに明るい美遥先輩は、こんなふうに写真に対して誠実さの欠けるようなことを言っても、それをあっけらかんと受け流してくれるから、救われる。
百井君の影響でまたカメラを構えはじめても、やっぱりどことなく乗り気になれないときも多くて。特に今日は、百井君とふたりだけの秘密の場所だと思っていた美術室に実結先輩が現れ、勝手に落ち込んでいたりもしていて。
そんなときは、どうしてもネガティブになってしまう。通学鞄に入っている父から譲られたカメラに申し訳ないなと思いつつ、つい不誠実な態度になってしまった。
だって実結先輩は、百井君がどこで部活をしているかを知っているから、あの場所に現れた。みんなの代表で来た、とも言っていたから、一年生部員はともかく、顧問や、二、三年の美術部員は百井君の居場所を把握しているのだろう。
そんなの、最初から秘密でもなんでもなかったんじゃん……。
結局はわたしばかりが、わたしばかりで。そんな自分が、なんだか嫌になる。
「あれ、賑やかだと思ったらモモじゃん!」
「久しぶりー。俺らの顔、覚えてるー?」
と、そこに部長と副部長が現れた。
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