私はモテる(恋愛・失恋)

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私はモテる(恋愛・失恋)

私はモテる。 色んな男に、数え切れないくらい言い寄られてきた。 告白された数も、振った男の数も覚えてない。 私が一声かけたら落ちた。 欲しい男はいつだって簡単に手に入れられた。 いつだって、愛されたい男に愛されてきた。 でも、本当に愛した男なんて居なかった。 愛されれば満足だったし、ステータスさえ良ければ何も気にならなかった。 私が愛さなくたって、彼等は私を愛せれば満足だもの。 なのに。 あの男は振り向きもしなかった。 私が声をかけても、通常対応だった。 見向きさえされなかった。 今まで、こんなことなかった。 それにまた興味をそそられて、何としても振り向かせたかった。 彼好みの格好もした。 彼の好きなものも調べた。 色仕掛けだってしたし、彼にたくさん話しかけもした。 彼に好かれるように色々なことをやった。 けど、それでも駄目だった。 「貴女はとても綺麗だと思います。でも、僕には輝いては見えない。それに僕には世界一可愛い好きな人が居るので。本当にごめんなさい」 そう言われた。 その瞬間、世界が音を立てて崩れていく気がした。 一度だけ彼の好きな人を見た。 至って平凡な見た目をしてた。 確かに可愛いけど、何処にでも居るような。 でも、キラキラしてた。 私には出来ない、屈託のない素直な笑顔を見せて、心から笑ってた。 本当に彼が好きなんだって、伝わるくらい。 計算も何も存在しない笑顔。 ああ、あんな笑顔をするあの子には勝てないんだって。 初めて負けるって気持ちが分かった。 彼が言った輝いては見えないなんて言葉の意味が、分かった気がした。 初めて恋を知って。 初めて失恋を知った。 私はモテる (好きな人にはモテないのに)
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