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悪魔の愛(死ネタ・悲恋)
もう何十年も前の事。
私の前に、一人の悪魔が現れた。
とても美しい悪魔。
その姿に、可笑しな話だけれど惹かれてしまったの。
彼は私に言ったわ。
「何でも一つ、願いを叶えてやろう。しかし、代わりにその命を頂くがな」
だから、私は言ったの。
「じゃあ、私が死ぬその日まで、私を愛して頂戴」
って。
あの時の、とても面食らった顔は忘れられないわ。
それからの日々はとても幸せだった。
望み通り、私をとても愛してくれたわ。
誕生日や記念日、クリスマスには必ず私が大好きなお花を買ってきてくれて。
風邪をひいて寝込んだら、治るまで付きっきりで看病もしてくれて。
とても献身的で、優しい愛だったわ。
それが偽りの愛でも良かったの。
私はそれでも嬉しくて幸せだったのよ。
彼は笑わない人だったわ。
もっと言うなら表情を変えないのよ。
それでもね、ずっと一緒に居ると何となく、嬉しそうとかそう言うのが分かるようになったの。
看病してくれている間は、何となく、心配そうな顔を見せてくれて嬉しくて。
なのに、今、彼は泣いているの。
やあね、そんなに泣いて。
貴方が泣いている所なんて初めて見たわ。
お願いだから泣かないで頂戴。
貴方が泣いていたら、私まで悲しくなるわ。
大丈夫よ。
私はいつまでも貴方を愛してる。
貴方は一人じゃないわ。
だからお願い。
泣かないで。
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泣いたのなんて初めてだ。
皺だらけの細い手を握り締めながら、涙が止まらない。
これが悲しみと言う物なのか。
やはり人間は残酷だ。
自分だけさっさと逝ってしまうなんて。
命が短すぎる。
あの日、オレに死ぬまで愛してくれと言った少女は、今や老婆になって、その人生に幕を引こうとしている。
最初は形だけの愛だった筈なのに。
何時からか、本当に愛してしまって。
これが愛なのだと知るのに、何十年も要した。
この女を愛していると気付いたのは、つい最近。
もっと早く気付けたら、たくさん、お前に愛していると云えたのに。
さあ、代価の命を貰おう。
死ぬ前に命を奪わなければ。
「お前は死ぬまでと言った。でも、オレは死んだって愛し続ける」
オレは最後の口付けをして、魂を喰らった。
これでオレの中でお前は永遠に生き続ける。
(これからもオレはお前を愛してる)
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