編入生は二人

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腰をまさぐっていた手を後ろに隠して再度謝罪する。 擽ったことに関しては後悔はないしそんなに悪いとも思ってないけど。 「い、いえ………」 大丈夫ですとは言っているが警戒されている。心做し笑顔に先程の余裕がない。 そりゃあ出会って早々下敷きにされて挙げ句突然擽られたら警戒するよな。 しかし要らぬ疑いをかけられるのは御免だと思い、弁明することにした。 「綺麗に張り付いた笑顔だったので少し素の顔が気になってですね…その……」 断じてセクハラではないと必死こいていたら、クスッと七三さんに笑われてしまった。 「まだ硬いな…」 僕の、七三さんの笑顔への評価は幸い耳に入らなかったらしく、七三さんは笑顔のまま口を開く。怖い。 「張り付いた、ですか。貴方面白いですね。」 おっとやはりお怒りの様だ。聞こえていたのかもしれない。この「面白いですね」は無礼な奴めって意味だきっと。 笑顔の七三さんにジリジリと壁に追いやられていく……。 壁に背が当たる。 内壁は彫刻ないんだなと関係ないことに気付き、どんなお叱りを受けるのかと不安を覚える。 怒る時も完璧な笑顔なのだろうと悲しくなる。だって怖いじゃん。 そんな思考の世界から現実に戻ってくると七三さんの笑顔が間近に…… って近すぎやしません!? 綺麗な顔も近すぎるのは考えものだ。近くにある白い頬を掴み横に引く。 「顔が近いです。離れてください。」 と、お願いしたつもりなのだが心做しか余計近くなった気がして、本気半分おふざけ半分、仕方な〜く腹パンをすることにした。 僕の然程強くもない腹パンを受けて、不思議そうな顔で此方を見る。 少しの間沈黙し、我に返った(?)のか飛び退き「何するんですか!」と怒ってきた。 こっちの台詞である。 「貴方こそ何をするつもりだったんですか?」 そう、僕よりも10センチ以上身長高いのに七三さんの顔が真正面にあるのはおかしい。 僕の問に七三さんはふいっと目を逸らした。 そうして、何故かしばらくむっすりしていた。かと思うと、突然自己紹介を始めた。忙しい人だ。 「私は、緋壌堂学園、副会長、宰宛寺 幸彦(サイオンジユキヒコ)です。」 さらっとそう告げられる。直立不動で。 「あ、はい。僕は雪崎 薫(ユキサキカオル)です。」 お辞儀しておく。僕って良い子。
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