編入生は二人

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「私は理事長の命で貴方を理事長室まで案内するように言われているので、ついてきてください。」 それだけ言って歩き始めたので、僕は切り替え早いなぁなんて思いながら慌てて荷物を掴んで追いかけるはめに……… 副会長さんの足が速かったのだ。断じて僕が遅い訳じゃない。 本当に無駄に広い校舎だなと余所見をしながら歩いていたからか、副会長さんはもう10数メートル先にいて、此方を振り向きため息をついていた。 副会長さんは恐らく多忙の身。時間を取らせているのだから申し訳ない。探索は後回しにするとして急ぎ歩いた。 「随分遅いですね。走れないのですか?」 なんて意地悪く聞いてくるから 「廊下を走らないのは小学校からの常識です。」 副会長とい立場でありながら校則違反を勧めるとは…と茶化してあげた。 「高校生にもなってその様な校則、あって無いようなものですよ。」 生徒会は忙しく、走ることがままあるらしい。 「でしょうけど、守れる時は、守っておきたいんです。」 そんな話をしながら歩いているれば、あっという間に理事長室前。 少し名残惜しく思いながらも副会長さんに別れを告げて扉を叩く。 中から入室をたもす声が聞こえ、重そうな扉が大した音もなく開いた。 拍子抜けしながら、扉を開けたであろう人物、執事兼ボディーガード兼色々である刻竝 悠(トキナミユウ)さんに挨拶をして、部屋の奥に体を向けると優しい笑顔で此方を見ている男性がいた。 歳の判別しづらい人である。 雰囲気は重厚な大人の色気的なそれ。 (凄いちゃんとして見える) 感心しながらその男性のもとへ歩みを進める。 「おはよう。良い朝だね。ほらおいで!雅俊叔父さんだよ!」 いつも通りぱやぱやした人で安心し、落胆。 こんな叔父さん、壌堂 雅俊(ジョウドウマサトシ)が理事長でこの学園は大丈夫なのか不安になる。 悠さんもいるから大丈夫だと信じたい。 スキンシップ的ボディタッチを避けて 「お早うございます。雅俊さん。ここでは僕のことは薫君とでもお呼びください。」 と挨拶しておく。 「わかった。僕のことは、……別にいいか。」 安心して欲しい。他生徒の前で雅俊さんなどとは呼ばない。
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