編入生は二人

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スケッチブックはあまり埋まっていない。 つまらないなんて思いながらスケッチブックとシャーペンを鞄にしまう。 荷物を床に置き、扉を叩く。 悠さんの無駄の無さで忘れるところだったが職員室はと言うより大抵の部屋は自分で開けて入るものである。 引き戸であることに何故か安心した。 「失礼します。」 僕に続き、斎藤君も荷物を置いて入ってくる。数人の先生が此方を向いた。 「もしかして編入生かな?」 「はい、そうです。」 『もしかして』って、まあ、大量の生徒の顔と名前なんて一致させられるほど覚えてないよな。 「ちょっと待ってろ。瀧澤ー!」 僕は、職員室も広いなーなんて考えていた。 斎藤君は美形が多いとか考えているのだろう。室内を見渡して軽く引いている。 その様子を盗み見て微笑んでいたら 「おー、お前らが編入生か。ぱっとしねーな」 失礼なことを言いながら誰か来た。 「俺は瀧澤 昴(タキザワスバル)。お前らの担任な」 担任か。ホスト的な生き物と聞いている。どんな生命体なのかと見ていたら「何だぁ?惚れたか?」と聞かれた。恐ろしいことを言う人だ。 「違います。タイプじゃないですし。」 どこぞの大きい姫ぐらいの理由で返答。 「あそう。お前に惚れられても意味ねーしな。」 負け惜しみと思われる。ざまっ…ん゛うん。 ちょっと空気になってた斎藤君は、やはり一応かっこいい瀧澤氏に気後れしていた。 大丈夫。斎藤君の方が素敵(可愛い)。 「おら、行くぞ。」 瀧澤氏が歩き出したので、挨拶してから職員室を出ると荷物を掴む。 「何だ?その荷物。」 「友人からのプレゼントです。」 ついにこにこしながら答える。 「友達多いのな」 「いいえ。一人ですよ。」 嬉しそうに言えば、瀧澤氏は驚いていた。 絶対失礼なことを考えている。 僕は別に寂しいことはない。 「とりあえず、ソレはフロントに持ってって部屋まで届けてもらえ。」 先生って呼ぼうかな。え、待って。フロント何処にあるの。あ、基本フロントと言えば1階入口付近か。 自問自答し、階段へ向かう。途中にあった柱の陰にまた誰かがいた。もさい黒髪くらいしか認識できなかったんだがストーカーか。 気にせず降りる。 やはりフロントは一階にあった。
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