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副会長は苛々しているのか壁に誰かが登ってきたのに気付いていない。
登るのが静かなせいでもある。
俺の期待を大分裏切って現れたのは、黒髪をうざったく伸ばし、シンプルな眼鏡をかけたどこか暗い雰囲気のやつ。
マリモじゃない。瓶底メガネでもない。
期待はずれの奴は壁の上から辺りを見渡し、俺と目が合った。気がした。
バランスを崩したのか奴は壁から転落。見事に副会長の上に落ちる。ありがとう。
大量の荷物と共に副会長を下敷きにした奴は慌てて副会長から降りると、荷物を退けていく。
安否を確認している様だ。心配する必要はない。あんなことで副会長はしなん。
奴は平然と起き上がる副会長に驚いていた。そして不思議なことを言った。
「本当にいたんですね。感動しました。」
朝の静かな校門前でその声はよく響いた。
まるで知っていたかのような発言。しかも突然副会長を擽り出した。
これは親衛隊にバレたら、どうなるんだ?
副会長の声でよく聞こえなかったが奴は満足したらしく、副会長から手を離した。
この位置だと副会長の背中しか見えない。表情気になる見せて。
悶々としながら聞き耳を立てる。
どうやら副会長の笑顔が気に入らなかったようで、少し焦りながら説明していた。俺としては、多少変わりがあるものの王道的出会いイイネ☆だ。理想と現実には違いがあるものだ。
副会長は奴の発言を聞いて立ち上がると、奴を壁に追いつめいく。ドキがムネムネでやばい。いよいよかと身を乗り出したその時、奴が副会長の頬をつねった。
(何してくれてんの!?)
俺の夢と希望が、早起きの意味が!キスされとけよこの野郎と飛び出したい気持ちを抑え、深呼吸。
俺の気が収まる頃には2人は歩き出していて、ついには仲良く談笑し始めた。はぁん!?
2人の会話がとてつもなく気になりもしたが、行き先は知っているし、イベント会場(理事長室)付近で待ち伏せすることにした。
後をつけて副会長に気付かれたらやばいしな。
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