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少し焦りながら必死に物陰に潜んでいると、雪埼は今気づいたという様に此方を見て、そのまま通り過ぎて行った。
一瞬のことだった。チラリと此方を見てスっとそらす。たったそれだけ。それが、何分にも感じられた。暫くはスローで再生可能。
黒い瞳が窓からさしこむ太陽の光を反射して赤紫に輝いたのがよく見えて、流し目最高とか考えながらさらりと揺れた髪にも目を奪われた。
どうしようもなく胸が高鳴って、俺は自覚した。あいつは、雪埼は、確かに王道的なやつで、そして自分が恋をしたこと。
(俺ノンケだったのにーっ)静かに悶えながら心の中で大声で叫んだ。ショックが多い上に大きかった。
しかし、すぐに平常心を取り戻せた。我らが平凡君と、ホスト教師のおかげだ。
「あーっと…、先生。煙草吸ってます?」
なんて、平凡君が質問して、
「ん?あぁ。何だ臭うか?」
「はい、…少し。あの、体に毒ですよ。」
「別に良いじゃねぇか。人間なんてその内呆気なく逝くもんだろ。」
それとも何か?俺に死んで欲しくないか?とからかい半分に聞いている。
よく可愛い生徒たちに言われてるんだろう。
だが、平凡くんは
「先生が早く死ぬのは自業自得です。でも、先生の周りにいる、先生にとって大切な人は…えっと、なんて言うか…その。」
しどろもどろになる平凡君。
「えっと煙草って副流煙の方が有害じゃないっすか。その、周りの人に多大な被害が…」
ホストはぽかんとしていたが、すぐに笑顔になって、ガバッと平凡君に抱きついた。
ありがとう早起き。生きてて良かった。記念すべき総受け第一歩に立ち会えた!
俺が感激している間にもホストはグイグイと攻めて、良からぬところを触られたのか平凡君がその腕から逃げ出したところで、ちょうど雪埼が戻ってきた。平凡君が走り寄る。
別段どぎまぎしたりとか、嫉妬の感情、その他特別な感情は湧かなかった。目が吸い寄せられるくらいだ。あと、少し不整脈。
兎に角、…3人が教室に向かうということで、これはやばいと急ぎ自分の教室に来たのだ。
俺が着いた時には生徒はまだ3〜4人しかいなかった。だが、少しも経たないうちにぞくぞくと生徒が登校してきた。そしてついに、チャイムが鳴って今に至る。
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