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荷物は重いがそれ程でもない。
足場になりそうな彫刻もある。心苦しいが足蹴にさせて頂こう。
ゲーム感覚で…結構辛いけど意外と楽しい。傍から観れば割と恥ずかしい姿だが、人がいないのは確認済み。結構早い時間なんだぜ今。
無事登り切り、縄を回収しながら辺りを見回すと、木の陰に人らしき影が見えた。
声をかけようとしてバランスを崩す。
灯台もと暗し。真下に人がいた。
黒髪七三分けの髪型で、細いフレームの眼鏡をかけた、一度見たら忘れられない美しい顔立ちをした、残念ながらここの男子生徒である。
驚いて此方を見上げる青みがかった黒い瞳と目があった。
こんな男子校にいるなんて信じたくない。そんな容姿を持った彼に大変申し訳ない…が、受け止めて頂こう。
ドサッ
というそれなりに大きな音と驚きの声。
衝撃に備えて荷物を下敷きにして体を丸めておいて良かったとしみじみ思う。
荷物の更に下に人を敷いてしまったことは想定外なので許して欲しい……早く退けよう。
先に自分が降りてから荷物を退ける。
大丈夫かなと様子を伺うと、なんと起きた。それなりに重い僕と荷物。しかも自由落下。この衝撃を受けて普通に起きるだと?
しかも此方を見やり、笑顔を浮かべる。
綺麗に形作られた笑み。神秘的だー。是非本物を写真に納めたい。
それにしても我が友メシアの情報通りとは。
彼が笑顔で何か言おうとしたが、それよりも先に
「本当にいたんですね。感動しました。」
と、メシアの予知に感心した僕がさらっと妙なことを口走ってしまった。
七三さんも首を傾げている。
笑顔のままで、器用に眉を寄せながら。
ああ嫌だ。話に聞くのと、実際目にするのとでは大違いで、僕は七三さんの作り笑いに薄ら寒いものを感じた。
少し期待を持って七三さんの腰に手を伸ばす。彼が驚いて身を引いた時にはもう遅い。
「なっ…ふっふふっ、ちょっと!?」
逃げようと必死だがどうにも動けないらしい。
「うん…まだこっちの方が良いですね。……あ、失礼しました。すいません。」
顔を赤くして、焦って息を乱しているあられもない七三さんの姿で我に返った。
ついやってしまったが初対面でかなり失礼だ。しかもまだ下敷きにしてしまった謝罪もしていない。
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