1人が本棚に入れています
本棚に追加
ピロリン! ピロリン! とスマホが機嫌良く歌い続ける。
一方で俺は不機嫌面を引っ提げていた。
3月下旬。4月上旬。
この時期は日本全国で桜が話題となる。住む地方も関係なく、日本人だろうが外国人だろうが関係なく、男だろうが女だろうが関係なく、桜に惹かれるのだ。
ここまで来ると桜にはもはや魔力のようなものが備わっていて、人間は無意識にそれに引かれてしまうのではないのか。なんて妄想も働いてしまう。
尤も、そんな発想に至った一番の理由は今が死ぬほど暇だからだ。
これは偏見かもしれないが。
女性陣が「お花見行こう」と騒ぐのは花があるのだが、男が「花見しようぜ」というのは、こう、なんというか……柄じゃないというか、似合わない。
とはいえ、男とて桜は見たいのだ。
そんなこんなで、俺は今絶賛花見中だ――ひとりで。
俺はやかましいスマホを手に取り画面を見た。
複数のメッセージが送られてきている。
【場所取りしてるかー?w】
【ちゃんと起きてるかー?w】
【既読つかねぇww】
【寝てんじゃね?ww】
俺はまたそっとスマホを伏せた。
春の柔らかい日差しが降り注ぐ。
今日は花見日和だ。天気予報でもそう言っていたし、多くの人が桜のもとに集うだろう。
そんな中、俺は家が近いという理由で場所取りに抜擢された。
いくつもある桜の中から、目に付いた1本の桜の下にどこにでもありそうなビニールシートを敷き、靴を脱ぎ、ぽつんと座り込んでいる。
ちらほらと人も見えているが、やはりまだ早いのか、そんなに大勢は居ない。
ここにいるのはきっと俺と同じように場所取りをしに来た人なのだろう。
複数人で場所取りしている人は楽しそうに談笑しているが、残念ながら今の俺にそんな相手は居ない。朝もそれなりに早かったし、やることもないし、寝てしまおうかと俯いて目を閉じたところで声を掛けられた。
最初のコメントを投稿しよう!