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「おっす! お待たせー!」
「場所取りサンキューな!」
奴らは手に提げていたビニール袋をどさりとシートの上に置いた。
奴らが靴を脱ぎながらシートに上がり、そしてそのビニールの中から缶を1本ずつとっていく。
「よっこらせ」と爺臭い声を出しながら俺の近くに座った奴から俺の分の缶ビールを受け取る。昼間から何飲んでんだって我ながら呆れるけど、今日ぐらいいいだろう。というか、今日ぐらいしかしないし。
「何お前。なにそれ、おしゃれ?」
「は? なにが」
そいつは俺を指さしてから、自分の頭を指さした。
「……まさか虫か?」
自分の頭を触る前に念のため尋ねておくと、奴は愉快そうに笑いながら「違う違う」と手を横に振る。
とってくれる気配もないので自分でとってみる。
俺は奴が示した場所に手を伸ばす。ぬくもりこそは残っていないが、そこは彼女が触れていったところだ。
髪を梳くようにして、俺の手に乗っていたのは桜の花びらだった。
「ってか、お前暇つぶしに掃除でもしたのか?」と軽口を叩かれ、「んなわけあるか」と返しながら何故そんなことを言われたのかを真面目に考えた。
答えはすぐに出た。
俺の横に花びらが何枚も落ちていた。散ったのではなく、奴が言うようにかき集めたかのように一点集中している。
そこは先ほどまで彼女が居た場所だった。
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