就職

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 俺が探検を終えてから最初にギルドに到着したのは、先日おっさんを窘めてた女の人だった。その後からは試験受けるっぽい人が間を置かずに来て、街が賑わい始めた頃には皆集まった様だった。 「はい。今から試験やるよ。まず、簡単な書類試験と実技。あとは実際に仕事してみてもらうから。」  書類は主に文章問題と数字だった。事務処理関連だな。手紙屋さんだし。この試験はのんびりしてたら終了した。  実技は体術や魔法。簡単な体力測定みたいなものだった。この試験の合間に対談というか世間話のようなことをお姉さんがしていた。俺は適度に好成績を取って終了。  一貫してギルドランクを問われなかった。必要なのはランクじゃないもんな。  最後が職場体験。  他所のギルドから宛先が街内の手紙を譲ってもらったらしい。受験者はそれぞれ何通かの手紙を預かり、今日中に配送する。  言ってしまえばそれだけなのだが、なかなか骨の折れる作業だ。地図を見たって誰が何処に住んでいるかなんて書かれていない。当然人に聞きながら探すしかない。  周りを見渡せば、受験者は皆渡された手紙を手に眉を寄せていた。  俺も渡された手紙に目を落とす。嬉しいことに全部知ってる場所、昨日探索した範囲にあった家ばかりだ。 「んじゃ、配達いってきまーす。」 「はーい……。」  俺は意気揚々と走り出した。頭の中に地図を広げ効率の良い配達順路を浮かべる。最初の通りに足を踏み入れ、目印にと表記された店の近くで宛先の名前を見つけた。 「お届けものだよ。」 「あらあら、ありがとう。何処から来たの?疲れたでしょう。」  長旅のついでに届けに来たと思ったのか優しく微笑んだ女性に、次の配達があるからと別れを告げる。もちろん手紙屋ギルドについて話しておいた。  女性が勘違いしたのも当然だ。先程の手紙は遠方からだった。あのギルド長わざわざ転送してもらってまで手紙集めたのか。顔が利くのかなと考えながら次の場所へ走った。  分かりやすい店、その近所、特に目印がない場所。効率良く回ったし、手紙の量も少ないので直ぐに終わった。そのまま真っ直ぐギルドに戻り扉を開いた。 「配達完了ー。」 「え、おお疲れ様。」  ギルドの中にはギルド長と女性職員しかいなかった。どうやら俺が一番乗りらしい。 「本当に届け終わったのね?」 「当然。」  一応と確認を取られたが、それだけだ。疑ってるにしても表には出さない、決めつけで判断したりしない。俺はこのお姉さんが気に入った。そして優秀な職員をきっちり手にしてるギルド長も見直した。
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