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「何かよう知らんが、正規職に就きたいってんなら、新しいギルドが人手探してるって耳にしたぞ。」
「ギルド隊員ってこと?」
「いや、どうにも違うらしいが。」
詳しくはおっちゃんも知らない様だけど、とりあえず良い情報を得られた。美味しい昼飯も。
「有難う。また来るよ。」
新しいギルドの位置情報を教えて貰い、少し残した串焼きを鞄に突っ込むと、俺は足早にその場を去った。
何せおっちゃんの情報は数日前のもので、下手したらもう募集が終わっているかもしれないと言うのだ。自然と足も早くなる。
商店街を抜けて街の真ん中へ向かうと、大きなギルドが目にはいった。大規模ギルドの……大規模ギルドだ。そのギルドの真向かい、石と木でできているのか酒場のような雰囲気を醸し出している建物。
おっちゃんから聞いた通りの外観だ。あれが目当てのギルドだろうと見当つけて酒場ミタイナギルドに近づき、扉に手を伸ばした。
しかし、俺が取手を掴むより早く扉は開いた。内側から開けられたのだ。そして中からぞろぞろと人が出てきた。大多数が若い野郎共で後は中年くらいの男や若い女。
一様に仏頂面を晒している。
人並みに押される前に壁際に寄る。仏頂面集団はブツブツぶつぶつ何かを言いながら出ていく。最後に出てきた短い金髪の少年が荒々しく扉を閉めた。目が合う。
「お前もギルド隊員になるためにここに来たのか?無駄だぜ。ギルド隊員の仕事はない。というかここはギルドですらないぜ。とんだ無駄足だ。」
とまぁ、ご親切にも一方的に聞いてもないこと言って去っていきやがった。
その後姿は苛立ちを隠そうともせず…というか仏頂面集団はだいたい同じような背中で去っていくわけだが、中には唾を吐くやつまでいた。汚ぇ。
まぁその聞いてもない情報提供により、ああいう人間には嬉しくない仕事だと分かった。おっちゃんの言ってた通り本当にギルド隊員じゃないみたいだ。
気を取り直して扉に手をかけた。開いた先、真っ先に目に入ったのは木屑。目に木屑が入った。木屑が充満してた訳では無い。ちょっと舞ってたやつが入ったの。ついで木の匂い。
ギルド内は只今改修工事真っ最中と言った感じだった。いや、もうすぐ完成と言ったところか。外観とは多少不釣り合いな落ち着いた雰囲気の洒落た内装になるのだろう。
良いなー落ち着きそーと感心していたから忘れるところだったが、面接とかってどこでやるんだろ。周りを見渡せば固まって話している集団があったので近づいてみる。
「おはようございます。ここで正規職につけるって聞いたんですけど。」
第一印象は大事だからね。元気に入っていくと、ガタイの良い強者って感じの人が反応した。
「初めに聞いとくがどんな仕事したくて来たんだ?」
ギロっていう目で聞いてきた。隣の女の人がボソッと「学習したんですね。」って言ったのは多分彼には聞こえてない。
「ギルド隊員みたいでそうじゃない仕事だって聞きました。俺の希望は、危険な仕事は嫌だし書類仕事も嫌だから適度に体を使う仕事です。贅沢は言いません。」
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