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翌日が試験だし、ギルドとしては今日丸1日を準備時間に使ってもらう考えだったんだろう。
実際職に着いたら急な対応がほとんどだろうし1日猶予があるっていうのは優し過ぎるんだよな。他の人は何をして過ごしてんだろうな。
明日、具体的に何をするのか知らないけど他の人はどういう準備するんだろうな。うん、つまり何が言いたいかっていうと「準備って何?」だ。具体的に何が必要?
黒いつぶらな瞳を見つめながら古びた宿の床を転がる。背骨が痛い。そもそもあれだ、ここまで旅してきた荷物があれば大抵なんとかなる。買い足したいものは給金が入らないと買えない。
実質準備万端か。
俺は読書に洒落込むぜと鞄から本を数冊取り出した。体を起こしてベッドに背を預け本に目を落としながら相棒を撫でる。
「そういえば、生え変わり近いよな。」
相棒と相棒になってからもう2年になる。外皮の生え変わる時期も把握している。が、実を言うと抜ける瞬間は1回しか見たことがない。
「今回は見せて貰えるかな……お前も本読むか?首都の本屋なら品揃え良いだろうし、今度行くか。」
人差し指の先で相棒の頭をわしわしと撫でる。相棒はぶるぶると身体を震わせると、腹の上に飛び込んできた。
それから日が暮れるまで時々ページをめくる邪魔をされながら読書を進めた。
そして今日、昨日から見て翌日。つまり試験当日。俺はかなり早い時間から酒場ギルドの屋根を椅子替わりに朝日が昇るのを眺めていた。
結局本を全部読み、疲れたから早くに床につき、日が昇る前に目覚めてしまった。夜型の相棒が騒がしかったのもある。その相棒も今は寝ている。
少し大きく息を吸う。歯の隙間を通り、片頬を震わせながら吐き出す。ぷふぅーーーと気の抜けた音を聞きながら徐々に目を覚ます街を眺めるのは良いものだ。
日が完全に昇ると同時に大きく伸びをして屋根を飛び降りる。
ちょうど来たところらしい誰かの真横に着地した。その人物は一瞬驚いたように目を見開き、そのまま酒場ギルドの中に入って行ってしまった。
「おはよーっす。」
挨拶をしながら扉をくぐる。2番のりで来ていたのは強そうなおっさんギルド長である。そうでもないと扉開けないからな。
「早いな。」
そう一言残し、おっさんは奥に引っ込んでしまった。
そうか、俺をほっとくんだな。そうなんだな。んじゃ遠慮なく。
他の人が来るまでには、おっさんが入って行った受付の奥以外はほとんど探検し終えたと思う。 まぁ何処もまだ物置いてないからただの部屋だったから面白味には欠けたけど。
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