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お迎えです
ふっゆーがはっじーまるよっ
ふふっふふんふんふっふふふーん
その声に起こされ目を開けると5歳の娘が窓の外を眺めながら歌っていた。
はじめの歌詞しか知らないためか最後の方は誤魔化すみたいに鼻歌になっている。まだ舌っ足らずでちょっぴり音程が外れているけど、年相応で可愛らしい。
それにしても今日はやけにご機嫌そうだ。なにかあったのかと訊ねると、
「だってね、もうすこしで冬だから。冬はね、クリスマスだし、おおみそかだし、お正月だよ!雪がふったら楽しいの、すごいの!」
と、これまた可愛らしい返事が返ってきた。
それからまた、冬の魅力にとりつかれたらしい娘はひととおり冬のすごいところをハイテンションで語り、僕の部屋を後にして行った。
(冬……ねぇ…もうそんな時期か。)
娘が先程までみていた窓をのぞく。
なるほど、確かに木々は葉をすっかり落としていてまさに冬の訪れを告げるようだった。
外は風が強く吹いていてはだかの枝が揺れている。それは今にも折れてしまいそうで、何故か自分を酷く心細くさせた。
冬の景色はなんだか寂しくって気が滅入る。カーテンを閉めてしまおう。
最近の僕はいやに感傷的だ。よくないよくない。
もうすぐ死ぬからだろうか。
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