プロローグ

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弟が生まれる前、 周りの大人には「遥ちゃん、 弟ができて良いねえ」「遥ちゃんは良いお姉さんになるよ」、 と言われていた。 言葉にこそ出さなかったが、 自分に弟ができるということが、 私にはよく分からなかった。 弟、 という存在がどういうものか、 理解できなかったのだ。 当然、 なぜ弟ができることが良いのかも、 理解できなかった。 あるとき、 同級生の女の子に聞いてみたことがある。 その子は、 妹が生まれるのだと、 嬉しそうにクラスで話をしていた。 「どうしてそんなに嬉しいのか」、 と私が尋ねたら、 その子は変なものでも見るような顔をした。 それから、 「遥ちゃんはツメタイヒトね」と言って、 去って行ったのだ。
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