プロローグ

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出産の間、 私は部屋の外で父と一緒にソファに座っていた。 そのうちに、 母方の祖母と祖父が駆けつけ、 父方の祖父母も来た。 「どうなの?」 「いや、まだ」 そんな会話を聞きながら、 私はただ、 出産が早く終わることを祈っていた。 待っている間中、 暇をもてあそんだ祖父母たちがひっきりなしに話し掛けてきて、 うんざりしていたのだ。 出産は数時間で終わった。 安産だったらしい。 祖父母たちが一斉に、 母と新しい孫めがけて走って行くのを、 私は安堵のため息で見送っていた。 生まれたての赤ん坊は顔がしわくちゃで、 体には皮膚の残骸のような白い物体がそこかしこに付いていた。 お世辞にも、 可愛いとは言えない。 同じ人間とも、 あまり思えなかった。
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