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枝葉主義...月面政府が立脚する政治体制。民主主義に代わる新たな思想潮流として登場した。長い間民主主義体制は最良の政治思想であると考えられてきた。確かにそれまでの政治体制に比べ弊害は少なかったが、それでもその体制末期には幾つかの欠点が露呈してきた。その第一は多数が常に優先され、所謂数の横暴が起こること。第二はその逆に多数の人々が正しいと考えた選択を少数派が数の横暴として批判し、少数派の意見も尊重しろと言って要求を突き付けること。第三は別の世界・別の時代の人々が見たら明らかに間違いと判断できるような政策でも、民衆の無知故にその間違った政策を支持する多数派を形成してしまうこと。第四はその逆に正しい政策であっても民衆の無知故に支持されないこと。第五は構成員は必ずしも均一ではなく、常に多数派を形成できる民族・宗教等の大集団が存在していれば少数派を一切考慮することなく常に意見を押し通せること。第六は構成員の大多数の利益を満たす政策であれば別国家・別勢力に不利益となる政策であっても支持されること。第七は民主主義を次善と思う意識が人類の思想的停滞を招いていること。これらの欠点があるにも関わらず旧時代の人々は民主主義が最良であるという意識を棄てることが出来なかった。この停滞を打ち破ったのが"(-表示できません-)"である。彼は民衆が無知の状態のまま何かしらの政治的支持・主張をすることを嫌悪した。とは言っても彼は名君親政を肯定するような愚者ではなかった。民衆を有知の存在へと導いてこそ、より一層英邁な文明が築けるのではないかと考えた。人類の有知的存在への昇華が彼の究極の理想であった。その手段として彼が考えたのは以下の二つの事である。第一に、民衆に全ての情報が外部脳端末を通して与えられること。第二に、知識メモリーチップの補佐により全ての人が全ての知識を理解し判別することが出来るようになること、である。植木職人が剪定をする様に、棋士が次の一手を考える様に、各人が目の前の選択に掛かる全ての分岐的展開を理解しその取捨を理性的に決定してゆくこと。これこそが彼の辿り着いた思想、枝葉主義であった。
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