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「え?」
ちょっと離れた所ににこにこ笑ってくるみを待っている和也がいた。
しきりに唇を動かして「早く行こうよ」と語りかけている。
「……あの、えと、でも、今は和也くんと一緒で……」
「あーーそっか。
カズも都南大、受けてたよな?」
「あ、うん、受かってるよ。二人とも受かったの!」
「おーー良かったなぁ」
「うん。だから、その……一緒に合格発表見に来てて、多分、今から二人でお祝いする……と思う」
「……」
「あの、和也くんが呼んでるから……行くね」
くるみはそう言って電話を切った。
ーーこれでいいんだ……
だって、そうじゃないと、アタシはいつまで経っても翔吾のことが忘れられない。
「かんぱーい」
「かんぱい!」
和也とくるみはジョセフィーヌでグラスを鳴らした。
やっぱりここでお祝いしないと落ち着かないよね、と二人で笑いながらやって来たのだ。
都南大のキャンパスの話をして盛りあがる。
表玄関である都南大の石造りの正門は、重厚で国の重要文化財にも指定されている立派なものだ。
まさかその門をくぐれる日がくるとはくるみは想像もしてなかった。
料理を待っていると、くるみに電話がかかって来た。
翔吾からだ。
ーー何だろう、今ごろ?
電話に出るなりいきなり言われた。
「今どこ?」
「何?」
「だから、今、どこなの?」
「え……と、ジョセフィーヌだけど?」
それきり電話が切れた。
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