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「くるみちゃん、もういいよ」
くるみが感情に任せて吐き出していたら、和也が静かに制した。
「え?」
「翔吾にベタ惚れじゃん……ばかばかしい。オレ、帰るわ」
和也は立ち上がって、そのまま店を出て行った。
翔吾とくるみが二人で取り残されると、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
まともに翔吾の顔が見れない。
そのままジョセフィーヌを後にして、翔吾とくるみは並んで歩き出した。
「今日、電話もらっただろ、合格の」
「うん……?」
「オレ以外のヤツが先に『おめでとう』を言ったと思ったら、すげー腹が立った。
くるみが嬉しそうな顔をしてるのを最初に見るのはオレだーーってね」
翔吾がくるみを見つめる。
くるみは急にドギマギしてきた。
「う、……あっと」
おでこの前に両腕を当てて顔を隠したのを見て、翔吾が笑い出した。
「何、それーー相変わらず色気ねぇなあ」
「いや、だって、その……」
頬がカーッと熱くなってくる。
「合格祝い欲しい?」
「え?」
翔吾がくるみの方にじわじわとにじり寄る。
くるみは路地の隅に追い詰められた。
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