ESPER

2/2
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「で、話って?」 不意に足を止め、アタシを見下ろしながら言った。 「え?」 頭二つ分背の高いアイツの顔を見上げる。 「話って・・別に何も…」 思わず口ごもる。 アタシは公園を抜けて帰ろうって言っただけ。 満開の桜を一緒に観たかったから。 そりゃ、二人っきりになれたら今日こそは・・って思わなくもなかったけど。 でも・・話があるなんてひと言も――― 「”話があるなんてひと言も言ってない”?」 「えぇ!」 これ以上は無理!ってほど目を見開く。 何で判ったの? アタシ声に出して・・言ってないよね?! 嘘っ。まさか…今まで気付かなかったけど… 特殊能力の持ち主? エスパー?! あ、でも雰囲気あるかも。 彫りの深い顔立ちはどことなく神秘的だし、琥珀色の瞳は見つめていると吸い込まれそう… 「また、くっだらねぇ事考えてんだろ。超常現象研究同好会の会長さん」 容の良い唇に意地悪な笑みが浮かぶ。 やっぱり心を読まれてる。 それじゃ・・もしかしてアタシの想いも? かぁっと頬が熱くなる。 「全部お見通し」 「やっぱり!エスパ・・」 言いかけたアタシの腕を掴み、ぐいっと引き寄せた。 息がかかるほどの近距離に鼓動が跳ね上がる。 「オマエくらい判り易いヤツはいねぇよ。 すぐ顔に出る…それに・・」 「それに?」 アタシがオウム返しに尋ねると、少しだけ照れたような顔をした。 「オマエの事だけをずっと見てたから」 ぷいと気まずそうに逸らされる視線。 え・・えぇ! それって…もしかしてアンタもアタシの事が、す・す・す・・き? 「あ~もぅ!じれってぇな」 澄んだ瞳の中にアタシの顔が映り込んだ。 「よく聞けよ。オレはオマエの事が好きだ。 だから…オレと付き合って_________下さい」 ・・これって夢?…じゃないよね? 「返事は?」 「…そんなの・・聞かなくても判ってるでしょ」 恥ずかしくて俯くアタシの顎を、繊細な指先で押し上げ上を向かせる。 「聞きてぇんだよ。オマエの口から」 少し細められた目。 「アタシ・・アタシの返事は…YE・・S・・」 求められた答えを返し終えた唇に、やわらかな封印が落ちてくる。 祝福の紙吹雪のように、ハラハラと舞い落ちる薄紅の花びら。 その肩に・・髪にも… アタシはそっと瞳を閉じた――― おしまい︎♥
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!