6.月のない夜には君の名を

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「どうか…やめとくれやす…」 ビクッ! 女の人の悲鳴に震え上がる。 この騒ぎの侵入者はケモノじゃないと確信した。 「誰かぁぁ…」 悲鳴が途切れた?! 夜這い? 強盗? 殺人事件とかじゃないよね…? ピカッ 漆黒の闇夜に強い光を放つ。 雷? 稲妻の方を見たとき、凄まじい音が地上に鳴り響いた。 「ひゃっ…」 小さく声を出してしまうミス。 慌てて口を押さえる。 天地がひっくり返るかと思うくらいの雷鳴。 ゴロゴロなんてかわいいもんじゃない。 雨音、雷。 耳をすます。 よく見えないから、耳に聞こえる音で確認する。 刀の音? これ、斬り合いしてる音だ。 暗くて分からないけど、何人かいる。 刀の音と、男の人の声、息づかい。 そして… 低いうめき声がすると、その後は嘘のように静まりかえった。 それが不気味過ぎて気持ち悪かった。 足音が大きくなる。 足早にこちらに向かってくる。 今からわたしの目の前を通りすぎるんだろう。 気づかれてないと思うけど、見えないように身を縮めた。 一度目を背けたものの、怖いもの見たさというか…変な好奇心が先走り、暗闇に紛れたまま息を殺して、また戸の隙間から覗いた。 止めておけばよかった。 心の底から後悔することになるから。 再度、稲光が瞬間的に闇の中で冴えた。 ウソ…!     
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