6.月のない夜には君の名を

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ウソでしょ… 自分の目を疑った。 彼らが立ち去る瞬間、そのうちのひとりと目が合った気がした。 眼光鋭く、睨みつけるように周囲を見渡す人。 誰にも見られていないか確認してから、いちばん最後に部屋を後にした。 今のは… 土方さん…? それから… 沖田さんと、左之助兄ちゃんと… 山南さん…? ウソ… 信じられない… ここで何してたの?! 目を見開いたまま固まる。 動けない… 地面に根をはり、足から凍りついたみたいに体が動かない。 何が起きてるのか、土方さんたちが何をしていたのか、その場で茫然と考えていた。 縛られて凍りついていたのに、今度は全身を襲う脱力感。 力が入らない。 騒ぎが聞こえて、見に来ただけかもしれない。 ここへ飛んで来たら、すでに事件が起きた後だったのかも。 ううん。 たぶん、そうじゃない。 うすうす気づいてた。 予想はつく。 だけど、そんなことは絶対にないと信じたい。 4人が完全に立ち去ったのを確認し、恐る恐る障子戸を開けて隣の部屋の様子を見に行く。 その部屋は芹沢一味の部屋。 心臓を押さえる。 きゅっと着物の胸元を握った。 だんだんと暗闇に目が慣れてきた。 少し歩いて立ち止まり、恐ろしい状況に息を呑んだ。 人が…人が倒れてる…! 「きゅっ、救急車…」     
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