9.心に灯りをともす

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声が出ずに固まっていると、両隣の沖田さんと平助さんに肘でつつかれた。 「名前!聞かれてる!」 ナイスフォロー! 小声で救いの手を差しのべてくれたのがありがたい。 「は、はい…秋月かれんと申します」 「會津の出というのは誠か?」 「はい。会津の者として…会津中将(ちゅうじょう)様にお目通りでき…大変光栄でございます。何と申し上げれば良いか…」 自分が何を言っているのか、何を言ったらいいのか、言葉遣いは合っているのか。 『会津中将』という日本酒があるのを思い出して、それを声にしたけど良かったかな? 会津藩主のことを指すと聞いた記憶があるし、お咎めがないからOKってことで… 松平容保。 儚げで美しい顔立ちのこの人が、会津の若き藩主。 局長は松平容保…様からの信頼も厚いらしい。 顔は知っていても、当然白黒写真でしか見たことはない。 彼の生きていた時代に来たからといって、普通は会えるわけないのに。 何で?! 今、なぜ目の前にいるんだろうか。
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